敬語の話(2)

どうして尊敬語を使うべきところで謙譲語を使うという誤りを犯すのかといえば、日本人が昔から「敬語というものは(尊敬語か謙譲語かに関係なく)上品な言葉だ」と思いこんでいたからだとしか考えられません。プロナビで高校生に古文を教えるとき、「『奉る』は基本的に謙譲語だが、『食ふ』『飲む』『乗る』『着る』の意味のときは尊敬語になる」と話しています。また、「給ふ」は四段活用なら尊敬語だが下二段活用なら謙譲語です。このように、昔から尊敬語と謙譲語の区別は、かなりあいまいであったわけです。

作文の指導をするときに「自分の親のことを『お父さん』『お母さん』と書いてはいけない。必ず『父』『母』と書きなさい」と話します。親は身内なので『お父さん』『お母さん』という尊敬語は使ってはいけないのです。ところが、(次回につづきます。)